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死刑制度は存置と廃止の二項対立か [死刑制度]

よく世論調査として出される「死刑制度についての世論調査」のようなもので、たいていは死刑存置の人々がかなり多数を占める。
死刑制度に限らず、こうした調査は妥当性が問題になることが多い。死刑制度に関する調査でも、「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」との究極的な死刑廃止論しか「廃止を望む」の側にカウントしていないから不公平だとか、「終身刑を導入すれば死刑制度が無くても良い」との項目を加えると廃止を容認する人がかなり増えるといった指摘がなされている。
実際、質問項目によって結果のパーセンテージはかなり左右されてしまう。例えば極端な話、「今は無理でも将来的には死刑を廃止しても良い」と「なにがあっても未来永劫、死刑制度を存置すべき」の二択だったら、廃止・存置のパーセンテージは今と同じ結果にはならないだろう。
そもそも選択肢の少ない調査で「本当の民意」なんて分かるのだろうか?
世論調査では浮かび上がらないような、死刑廃止・存置の二項対立では割り切れない多様な意見が、本当は存在するはずだ。

死刑廃止を望む場合でも、サッと思いつくだけで色々バリエーションがある。
・いかなる事情があっても死刑は廃止すべき
・将来的に国民が合意すれば廃止すべき
・被害者(遺族)に充分な手当てがあれば廃止すべき
・終身刑が導入されれば廃止すべき
・犯罪への抑止力が証明されていない以上、廃止すべき
・冤罪/誤判のリスクがある以上、廃止すべき
などなど。
これらのミックスとか、もっと他とか、廃止を望む理由、廃止を認める条件は様々だ。

逆に存置の場合も
・いかなる事情があれ、死刑は存置すべき
・国民の合意が無い以上、存置すべき
・犯罪抑止力がある以上、存置すべき
・終身刑が無い以上、存置すべき
・被害者への手当てがなされていない以上、存置すべき
などの選択肢が考えられる。

読んで頂いて分かる通り、条件付(国民の合意があれば、終身刑があれば、被害者への手当てがあれば、被害者が望んでいれば)だと廃止・存置論は結局同じことを言っている。「条件付き賛成」も「条件付き反対」も、その「条件」次第で結果として同じ選択をし得るからだ。

また、存置論者の中でも、個々の事件について死刑を適応するか否かについては
・殺人事件はすべて死刑にすべき
・現行法で死刑に相当する場合、被害者(遺族)が望んでいれば死刑にすべき
・現行法で死刑に相当しなくても、被害者(遺族)が望んでいれば死刑にすべき
・現行法では死刑が相当でも、被害者(遺族)が望まない場合は死刑を適応すべきでない
・被害者(遺族)感情がどうあろうと、現行法での適正手続きによって死刑を宣告された場合、死刑にすべき
などの考えがありうるだろう。
鳩山発言(自動的に死刑執行)について否定的だからといって、必ずしも「廃止論者」ではないのは、存置論者にも様々な動機と考えがあるからだ。死刑はあっても良いけど自動的に執行はマズイでしょ、と思う人も当然いる。

こうした多様な考え方を、結果だけを見て「廃止」「存置」の二択で考えることに、そもそも無理があると私は思う。
おそらく本来なら、存置であれ廃止であれ、共通して考えるべき問題はたくさんある。それにも拘らず、単純に結論だけで「存置」「廃止」に分かれてしまって、ほとんど交流のない現状は良い結果を生まないのではないか。死刑制度へのスタンスの多様性を踏まえた上で、「存置」「廃止」を超えて議論すべき時期が来ているように思う。
とはいえ、最近のネット上における「死刑オッケームード」は「いかなる事情があれ、死刑は存置すべき」「現行法で死刑に相当しなくても、被害者(遺族)が望んでいれば死刑にすべき」といった過激な意見が多いように見受けられるので、そもそも議論が成り立たない可能性もあるわけだけど。

<関連>
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