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光市事件 情報発信の動き [光市事件]

光市事件:「報道を検証する会」がテレビ局に申し入れ
毎日新聞(2007年9月13日)
学者やジャーナリストでつくる「『光市事件』報道を検証する会」は13日、山口県光市の母子殺害事件を番組で取り上げたNHKや読売テレビなど在京と在阪の計6局に対し「被告の元少年に批判的な立場からの看過できない一方的な決め付けがある」と見解を尋ねる申し入れを行った、と発表した。
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この「『光市事件』報道を検証する会」がどういう団体なのか知りたくて検索したけど、まったく出てこない。どなたか情報をお持ちなら教えてください。

一方、光市事件の弁護団の一員で、橋下弁護士への提訴に踏み切った一人でもある今枝弁護士が動き始めた。
当初は、事件とは無関係の弁護士が個人的に運営しているブログで、コメント欄からの発言だった。
光市母子殺害事件の弁護団の一人、橋下弁護士を提訴した原告の一人、今枝仁弁護士の話(総まとめ)
そして14日、今枝弁護士自信がブログを立ち上げた。
弁護士・人間・今枝仁
これまでも弁護団は公判の度に記者会見を行い、時には文書によって主張を発信してもいるが、メディアの網を通って出てくると、弁護側の意図に反したメッセージに摩り替わっていることがほとんどだった。その情況は今もさほど変わっていない。
最終的な量刑判断や事実認定がどうなるかはともかく、メディアのフィルターを通さずに弁護人自信が情報発信を始めたことの意義は大きい。

それにしても、あの裁判を手がけつつ、たぶん生活のためには他の仕事もしているはずで、それと並行してブログ運営。しかもコメント・トラックバックとも制限せず、炎上覚悟ですべてのコメントを読み、返信も出来る限りすべてに対してするつもりのようだけど、そんな負荷の大きいことをやって大丈夫なのか。
今の司法の元で、刑事弁護士の荷は重くなるばかりに見える。
弁護人が情報公開をすることには限度があるし、本来なら裁判に没頭すべきで、世間やメディアへの説明なんて不要だとの声もある。そんな労力があるなら本来の裁判に全力を注ぐべきだし、また守秘義務等の観点からも、世間に情報発信することが被告人の不利益に繋がりかねないとの批判もあるようだ。
私もある意味では、そう思う。
しかし、裁判員制度が導入されようとしている今、注目されるような事件を手がけてしまった以上は、(それが正しいかはともかく)弁護人が一定程度は世間の理解を得られるような情報発信をし、メディア戦略を持たなければ、被告人の不利益に繋がりかねない。
いや、裁判員制度の導入がなくても、職業裁判官の判決ですらメディアや「世論」に大きな影響を受けている今、既にその事態はやって来ているのではないか。

橋下弁護士の主張するような「説明義務」に法的な根拠は無いし、そうした「説明」を怠ったとしても(今回は怠っていないわけだが)、それが弁護士としての倫理に反すると私は思わない。
だが現実問題として、説明ベタな弁護人では被告人の権利を守りきれない時代になっているのではないか。メディアの情報を鵜呑みにする人が少なからずおり、司法が(偏った報道に影響された)「民意」に大きく左右されるなら、メディア対策は被告人の権利を守るために必要な戦略の一つなのかもしれない。

【追記】2007/09/16 22:45
Because It's Thereさんで紹介されていた記事が興味深かったので孫引き。

----------朝日新聞平成19年9月11日付朝刊33面「Media Times」 より抜粋----------

弁護団も「対策」を講じ始めた。
8月6日、大阪市で開いた弁護団の緊急報告集会では、法医鑑定書や精神鑑定書など普段は公開されない資料を140ページにまとめた資料を配布。弁護士が対象だったが、180人が集まった。
「弁護士バッシングはオウムや和歌山カレー事件など過去にもあったが、マスコミを通じた扇動や懲戒請求ど、今回はこれまでとは様相を異にしている」。弁護団側は冒頭でまずそう訴えた。

東京でも、一般市民が参加できる説明会を開く計画を立てている。裁判の最中に、刑事弁護人が手の内を明かしながら国民に理解を求める集会を開くのは極めて異例だ。

主任弁護人の安田好弘弁護士は、「方針転換」の理由をこう説明する。
 「弁護士の役割は法廷で真実を追求し、社会に還元すること。場外乱闘はせず、法廷に集中するためにマスコミは無視するのが理想。だが、『石を投げよ』とまで言われて、そうはいかなくなった。裁判員制度を前にこのままではまずい、という危機感もある」

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あの(Wikipediaで「マスメディア嫌いで有名」の記述がある)安田弁護士ですら、世間やマスコミへの説明が必要だと感じているのだから、やっぱ背に腹は変えられないってことなのでしょう。
被告人の権利を守るためのメディア対策、という視点で前述しましたが、個別の裁判のみならず、このままでは刑事弁護自体が成り立たない(刑事弁護人の萎縮など)可能性があるし、そうなると司法制度そのものがアレになるわけです。
この裁判に関わっていない多くの弁護士が、弁護士バッシングや懲戒請求について疑問を呈しているのは、単に「同業者だからかばっている」とか「思想的に近いから擁護してる」とか、そういうレベルの話ではない。
このままじゃ、刑事弁護人(とそのサービスを受ける国民)も、司法制度そのもの(と司法によって裁かれる可能性のある国民)もヤベーよって危機感の現われなのだと思います。
説明の「義務」はないけど「必要」は出てきてしまった、というところでしょうか。

ベキ論としては「メディアや世論といった予断が判決に影響してはならない」訳ですが、現状ではまったくもって徹底されていませんし、裁判員制度が始まったらそりゃもーアンタって話ですから。


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コメント 4

愚樵

弁護士にもメディアへの発信力が求められている、ということなのでしょうけれども...。でも、そうなるとマスメディア・ジャーナリストの役割って何なんでしょうね? マスメディア・ジャーナリストが正確な報道を伝えず、弁護士等が自分で自分の意見を公表するようになるなら、マスメディア・ジャーナリストはその役割を縮小していかざるを得ないでしょうね。
各々が自ら情報を発信し、情報受信者にはメディアリテラシーが求められる。それ完全に達成されれば、ジャーナリストなんて不要のはず。けど、そんな「時代」が幸せな時代とは思えないんですが。
by 愚樵 (2007-09-16 20:14) 

sasakich

愚樵さん

そうですよねぇ。そもそも、マスメディア報道がここまで偏っていなければ、わざわざ弁護人自信が出てくる必要なんてありませんから。ある意味では、メディアに追い詰められて、当事者が出て来ざるを得なくなっているわけです。
しかし、そんなことすべての弁護士が出来るわけでも向いてるわけでもないですからね。裁判員制度が本当に怖い今日この頃ですよ。
by sasakich (2007-09-17 00:46) 

かに

はじめまして~。

マスコミの偏りに多くの方は気づきつつも、いつの間にかそれに翻弄されてしまう、悲しき一般市民の私たちですよね。

マスコミのえげつなさに憤りつつも、それを徹底抗戦するだけの決定的な方策が見つからない以上、受身の存在として、泣く泣く、やむなしに「マスコミ対応」に追い込まれざるを得ないと。じゃないと、言葉を発しないと、それこそ永遠にマスコミ情報操作の思うツボであると。それを回避する手段・手法が、否応なく求められるというわけでしょうね~。

私も裁判員制度が怖いです。

ま、でも、犯罪被害者数を減らす、冤罪被害者数を減らす、この点にはすべての人が異論なしだと思うのですが、各論では百家争鳴。いやぁ、いったい、両者を同時に実現する司法のあり方ってどんなカタチなんだろう。本当はどうあるべきなんだろう。難しすぎる問題ですね。
by かに (2007-09-17 06:22) 

sasakich

かにさん

初めまして。来訪&コメントありがとうございます。

メディアで取り上げられるような事件の弁護人は、本当に大変な時代になっちゃったなーと思います。元からキツ仕事だと思うのに、今や裁判プラス「世間向けの弁護活動」までしなくちゃいけないんだから。
そう考えると、ますます刑事事件を引き受ける人が減りそうな気もしますが、今は生みの苦しみの過渡期。であって欲しいものです。

冤罪については対策はいくつもあるように思います。取調べの可視化、長期拘留の取り止めなど。ただ、それをクニがやるかってことが問題ですけど。
犯罪そのものを減らすのは、本当に難しい課題ですね。
by sasakich (2007-09-17 18:37) 

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