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橋下徹弁護士のルサンチマン [光市事件]

以前書いた橋下弁護士に関するエントリーへのアクセス数が異常だ。
基本的にこのブログは日に200~300くらいのアクセスで、一件のエントリーに対して閲覧数は40から最大で300程度。しかし、このエントリーに対しては既に閲覧数が1000を超えてる。
自分で書いておいてナンですが、正直、ちょっと嫌だ。そんなに橋下さんに興味がありますか。

そんな訳でこの件にはあまり何度も触れたくないが、乗りかかった船って奴である。
橋下弁護士の公式ブログで、彼がなぜ光市事件の弁護団への懲戒請求が必要だと思うか(懲戒が認められると思うか)を述べているが、メディアから受ける彼の主張内容と、あまりに印象が違って驚きの連続だ。
「今回の弁護団の主張が荒唐無稽であること、あまりにもふざけた内容であること、この点については批判はしません。」
「僕だって「一審・二審」の弁護人として就任したらそのような主張もするだろうし、今回のような差し戻し審の弁護人に就任したなら、まずは被告人の更正可能性を徹底的に主張した上で、きちんと被告人や国民に説明する形をとってからこのような荒唐無稽な矛盾だらけの主張を行うでしょう。」
メディアでは散々、弁護内容自体を批判してきたように思うが、どうやら私の勘違いのようである。
では、実は弁護内容について批判しないらしい橋下弁護士は、何を懲戒事由と考えているのか。
それはひとえに、被害者に対して、国民に対しての説明義務違反だそうである。
弁護士に被害者・国民への説明義務があったとは初耳で、しかもその「説明義務」はこれとかこれとかこれとかこれでは到底補えないほどの説明量&質って事らしい。この事件を含め複数の事件を抱えた状態で、もちろん通常の雑務もこなしながら、言うまでもなく守秘義務を守った上でやるとすれば、大変なことだ。
まぁ、彼のいう「説明不足」とは、時間的・量的な問題ではなく「一般市民に届くようなプレゼンテーションをしていない」って意味だとは思う。ただ、弁護士はメディア向きの人間ばかりじゃないし、それと弁護士としての能力は別だろう。
橋本弁護士の主張内容に対する疑問・反論は、既にいくつかのブログでされているので、ご参照いただきたい。
橋下徹氏の弁護団説明責任論に異議あり
橋下徹弁護士の光市母子殺害事件弁護団緊急報告集会出席報告について
世間の風?

さて彼は、上記のような弁護側の説明不足(プレゼンテーション不足)が、弁護士一般の信頼・品位を下げた事を懲戒事由としている。確かに今回の事件で弁護団への非難が相次いでいる事を考えれば、世間は弁護士一般への信頼を失ったかも知れない。
しかし、それに対して橋下弁護士を含め、メディアに出ている弁護士たちは一度でも抗ったのか。
この事件に限らず最近の事件報道からは、国家権力の存在が忘れ去られている。多くの人が被害者と加害者だけを見て「かわいそう」「酷い」「許せない」と言い続けて、その延長線上で弁護士も批判を受けている。
けれど、弁護士は被害者から加害者を守っているのではなく、極悪人の肩を持っているわけでもなく、国家権力が被告人(とされる国民)の権利・利益を損なわないよう守る存在で、つまり「国家から国民を守る商売」だ。
国家はほうっておけば、自分の都合だけで過剰な制裁を加えたり、不当な弾圧をしかねない。だから、それを監視するために適正手続きによる裁判が必要であり、弁護士が必要なのだ。
そのことを、あれだけ多くのコメンテーター弁護士がいながら、一人としてして説明して来なかった。
その情況で弁護士批判が起きるのは当然だし、弁護士への信頼が落ちるのも当前。
私には、橋下弁護士のようなコメンテータ弁護士たちが、(弁護内容を支持するかはともかくとして)こうした「そもそもなぜ弁護士が必要なのか」を説明してこなかったことこそが、弁護団批判に繋がり、もしくはそれを煽り、弁護士一般の信頼を落としたように見える。

と、論理的にはいろいろ反論できるものの、それがどれほど意味を持つのか疑問でもある。
弁護団とそれを援護する弁護士たちへの批判として、橋下弁護士が繰り返し「世間の空気に触れていない」ことを論拠にするのを見ていると、実は彼の弁護団批判は論理的な問題ではなく、心理的なルサンチマンが根源にあるのではないかと思うからだ。
橋下弁護士はおそらく、格好や言葉遣いだけで批判されたり、理不尽な扱いを受けた経験が多々あるだろう。一方で、たいした能力も真剣さも感じられない弁護士が、身なりがきちんとしてるとか、経験が上というだけで優遇される場面も、繰り返し見ていると思う。実力ではなく態度や見た目だけで判断されてしまうのは、どんな世界でもよくある理不尽だ。
その事への憤りや恨みつらみが、今の弁護団批判へ転化してはいないか。
「俺はこんなに苦労したけど、お前らは違う。いつもバカにしやがって。本当は俺のほうが偉いんだ」と、結局本心から言いたいのはそういう事ではないのか。
彼にとっては、茶髪でシモネタを言う「型破りで異端児」の自分は苦労してきた(ゆえに正しい)弁護士で、型を破れない(黒髪でシモネタも言わず、人権とか主張する)弁護士はすべて「法律オタクのお坊ちゃん弁護士」と見えているのだろう。
つまりこれは、(橋下弁護士の主観としては)見た目だけで迫害されてきた「実力ある型破りなオレ」の、「良い子ぶって現実を知らない法律オタク」への復讐劇であり、下克上なのだろうと思う。

まぁ、気持ち的には分かるよ。
気持ちが分かるからこそ、今回の「型破り弁護士(橋下)の大物弁護士(弁護団)への下克上」は、彼の嫉妬とコンプレックスを見せ付けられるようで、痛々しく、何よりカッコ悪い。
そして、それが酷く筋違いな復讐である事は、言うまでも無い。

<関連>
【動画】橋下徹弁護士、光市・母子殺害事件の弁護団に怒る!


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コメント 11

通りすがり

前半部分はの主張は良いんですが、
後半部分はただの妄想ですね。
法曹界ではともかく、社会的には十分すぎる地位を得た橋本弁護士が
ルサンチマンを抱いているとは思えませんけどね。
by 通りすがり (2007-08-29 03:01) 

sasakich

通りすがりさん

来訪&コメントありがとうございます。
私は結局、橋下弁護士の判断に対しても「ただバカだからやってる」と思いたくないのかも知れません。だから、彼がこのような行動に出る心理として、想像よりは仰る通り妄想で補完したくなっちゃうんですよね。
でも、社会的地位があるからルサンチマンが無い、とは言い切れないとも思います。社会的な地位だけでなく、自分の所属する界隈(彼の場合は法曹界)での承認も得られなければ、満足できない人っていますから。
by sasakich (2007-08-29 03:51) 

ああああ

光市弁護団の弁護人で、明日橋下弁護士を提訴する今枝仁弁護士は、橋下弁護士よりはるかに型破りな弁護士だ。
今枝弁護士は、東大に毎年30人は合格するエリート高校を2回留年したあげく中退し、17歳で家を出て1人で生活し、大検を取得して22歳で大学に入学したらしい。
しかも、大学在学中はホストやラウンジのチーフも経験し、卒業後は東京地方裁判所の職員で働きながら司法試験に合格、いったん検事を経験して弁護士になったとのこと。
今も広島の水商売業界の多くは今枝弁護士の顧問先であり、しかも3年前には今枝弁護士の事務所が拳銃で銃撃されたほどヤクザとは揉めているらしい。
ラグビー選手として有名で、茶髪にジーパンくらいで「世間の風をたくさん吸い込んだ」と粋がっている橋下弁護士の比ではない。
by ああああ (2007-09-02 11:50) 

sasakich

ああああさん

来訪&コメントありがとうございます。
そうなんですか、すごい経歴ですね。
どういう経験が「世間に触れてる」かの基準も多様化してるので
まーなんか微妙なところです。
by sasakich (2007-09-02 12:07) 

a

プッ
はいはい

こういうこと主張すれば知的と思ってる人ね。おまえ

はいはい
by a (2007-09-05 23:58) 

愚樵

橋下弁護士提訴さるの報道を受けて、また議論が盛り上がってきてますね。

私の思うところ、橋下氏が主張の内容を方向修正しているのは、弁護団の弁護活動が極めてまっとうな事だと理解したからではないですか? けれど、あれだけTVで大見得切って発言していたから、いまさら主張も引っ込められない。引っ込めた瞬間にTVタレントとしての生命は終わる。んだもんで、やむをえず弁護士会の広報姿勢への批判に矛先を向けたのでしょう。

もっともこの批判は正鵠を得ていると思います。瓢箪から独楽ですけどね。瓢箪は腐ってますが、独楽はなかなか使い物になりそうです。
by 愚樵 (2007-09-10 08:28) 

1弁護士

前半:同意です。
後半:通りすがりさんと同意です。

おそらく橋下さんは、タレントの人間になってしまっただけだと思います。
弁護士という職を持っているがゆえに、テレビで稼げたのが、弁護士という職業がありながら今回の発言で危機に陥っているというのは、皮肉な結果になってしまいました。自分で自分の首を絞めてしまったのは憐れである。
by 1弁護士 (2007-09-16 20:23) 

1弁護士

前半:同意です。
後半:通りすがりさんと同意です。

おそらく橋下さんは、タレントの人間になってしまっただけだと思います。
弁護士という職を持っているがゆえに、テレビで稼げたのが、弁護士という職業がありながら今回の発言で危機に陥っているというのは、皮肉な結果になってしまいました。自分で自分の首を絞めてしまったのは憐れである。
by 1弁護士 (2007-09-16 21:13) 

sasakich

1弁護士さん

初めまして。来訪&コメントありがとうございます。
最近の橋下弁護士の苦しい言い訳を見ると、単に「勢いづいてしゃべって引っ込みがつかなくなった」だけなのかなーとも思います。本当に、自分で自分の首を絞めてますよね・・・。
by sasakich (2007-09-17 00:49) 

一市民

(通りすがりですみません)
光母子の事件の弁護団バッシングは、今の日本社会の偏りに恐ろしさを感じます。
バッシングする方は、検察側の主張や、マスコミで大仰山に報道された字面のみを鵜呑みにして、弁護団の記者会見や主張を見もしないで、一方的に批判をする。
安易なバッシングで、未成年が死刑になるという重大な判決を後押しをしているという認識があるのか・・・検察側の一方的な発言、警察内での強要はどうでもいいのでしょうか?
橋下弁護士に関しては、ブログを読んでも、感情論しか読み取れなく、正直ウンザリします。(↑で書かれているように、引っ込みがつかないって感じですね)
なんというか、ちゃんとした弁護士がちゃんとした仕事をしているだけなのに、安易なバッシングでちゃんとした弁護士がいなくなってしまうのではないかと恐ろしくなるのです。
by 一市民 (2007-10-31 11:44) 

天性の庇護者

一市民さんどうせ、橋下はいじめられたほうにも問題があるといっている芸人の擁護な人ですから。ほっとけばいいですよ。太田がつぶれたら橋下も消える。爆笑も最近たいがいな発言してるからともにテレビから消えるといい。
by 天性の庇護者 (2007-11-01 20:07) 

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