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裁判員制度について聞いてみた [司法]

もうじき始まる裁判員制度について、問題点・疑問点が多く指摘されている。特に裁判員制度については見切り発車の印象がぬぐえず、不備・不十分があちこちに見受けられていることは、多くの方の指摘されている通りである。
さて、そんな中、あまり取り上げられていない疑問点について法曹三者に電話で聞いてみた。

まず、質問した項目と私の問題意識は以下の通り。
◆Q1:裁判員に参加した事によって、勤め先企業から不利益を受けた場合、企業側への罰則はあるか?
裁判員に参加した事による不利益は裁判員法で禁じられているものの、罰則がなければ拘束力を持たず、意味が無い。
◆Q2:死刑反対を理由にした辞退は認められるか?
裁判員が死刑事件を担当する場合、死刑が出る可能性のある事件に関わりたくない、等の理由で辞退することは可能か。
◆Q3:面接において、死刑が量刑に含まれない事件も死刑云々の質問があるか?
裁判員を選ぶ面接の段階で、裁判官から「絶対に死刑を出さないと決めているか」といった質問が想定されている。
この質問自体、事件内容に関わらず「内心の自由を侵す憲法違反」との指摘があり、これに対して「定められた量刑の中に絶対に選択しないものがあることは、公平な判断の妨げになる」と反論されている。しかし、そもそも死刑になる可能性の無い事件(傷害致死、危険運転致死)も裁判員が担当する可能性があり、その場合に同種の質問がされるなら、明らかに憲法違反である。
◆Q4:的確ではない人が裁判員になった場合、判決は無効となるか?
裁判員制度化で、裁判員を選ぶための面接は4分程度とされている(アメリカでは、長い州では数日から数週間、短くても一人15分程度)。被害者・加害者に知り合いがいるなど、裁判員として不的確な人間を除外するための面接だが、すべて自己申告であり、この短時間で充分な検討がされるのか疑問。
万一、的確ではない人が偽って裁判員になり判決まで行った場合、その判決は有効なのか。
◆日本の取調べ情況に関する説明はあるか?
日本では代用監獄、録画・録音なし、弁護士立会いなしなど、被告人に不利益な取調べ情況が続いている。これは国際的に見てまれなケースであり、海外から指摘を受けているところだ。自白の信用性が問題になるような事件の場合、こうした内容を知っているか否かは判断に大きく影響する事が予想されるが、裁判所側から事前知識として説明はなされるのか。
◆外国人でも裁判員に選ばれる可能性はあるか?
規定では選挙人名簿から裁判員を抽選で選ぶ事になっており、選挙権の無い在日外国人(外国籍の外国人)が裁判員になることはできない。例えば北朝鮮問題で朝鮮学校の生徒がチマチョゴリを切られるようなムードになっている場合、事件の事実性とは無関係に、外国人への意識が判決に影響する可能性は無いのか。
アメリカの陪審員制度も同様にアメリカ国籍を必要としているが、アメリカの場合にはアメリカ国籍の外国人が多数存在しており、日本とは情況が違う。

そして、実際のやり取りは以下の通り

=========================

<法務省 裁判院制度啓発推進室>
◆Q1:裁判員に参加した事によって、勤め先企業から不利益を受けた場合、企業側への罰則はあるか?
・不利益な取り扱いをしないようにとの取り決めはあるが、裁判員法の中には罰則が無い
・ただし、裁判員制度になった事による不利益な取り扱いは無効となり、取り消されると思われる。
◆Q2:死刑反対を理由にした辞退は認められるか?
・辞退理由としては定められていない
・面接の際に自己申告すれば考慮される
◆Q3:面接において、死刑が量刑に含まれない事件も死刑云々の質問があるか?
・現状では質問内容が確定しておらず、明確には返答できない
 →定められた量刑範囲内で判決が出せない、という事が質問の趣旨と考えてよいか
・良い
 →であれば、死刑が量刑に含まれない場合もで同じ質問をするのは問題が無いか
・現状では質問内容が確定しておらず、明確には返答できない
 →死刑が含まれない事件でも、絶対にこのような質問が無いとも言えないという事か
・現状では断言できない
◆Q4:的確ではない人が裁判員になった場合、判決は無効となるか?
・罰則があるので、そもそも不適格な人が偽って参加する可能性は低い
 →罰則がある以上は可能性を想定しているのではないか。仮に不適格な人間が裁判員になり判決が出た場合、その判決は無効となるのか。
・場合によると思う
 →無効になる場合もあると言うことか
・免訴、公訴棄却など、裁判員の判断が影響しない判決であれば覆らない
・裁判員の判断が影響する判決の場合、被告人が裁判員の出した一審判決を不服として控訴すれば、控訴を認める自由として検討される
◆日本の取調べ情況に関する説明はあるか?
・基本的には無い
・自白の信用性が問題になる場合、弁護側が主張する可能性はある
◆外国人でも裁判員に選ばれる可能性はあるか?
・日本国籍で選挙権を有していれば、選ばれる可能性はある

<最高裁判所>
◆Q1:裁判員に参加した事によって、勤め先企業から不利益を受けた場合、企業側への罰則はあるか?
・不利益な取り扱いをしないようにとの取り決めはあるが、裁判員法には罰則が規定されていない
・労働基準法違反に添った判断になると思われる
 →法務省では無効になると言ってるが
・無効になるとの返答について、こちらでは法的な根拠が確認できない
◆Q2:死刑反対を理由にした辞退は認められるか?
・面接する裁判官の判断による
 →裁判官によっては、面接自体を免責されることはあるか
・召喚状に質問票を同封するので、それを考慮して裁判官が検討する。
◆Q3:面接において、死刑が量刑に含まれない事件も死刑云々の質問があるか?
・裁判官の判断による
 →定められた量刑範囲内で判決が出せない、という事が質問の趣旨と考えてよいか
・良い
 →であれば、死刑が量刑に含まれない事件で同じ質問をするのは問題が無いか
・裁判官の判断によるため、明確には返答できない
 →死刑が含まれない事件でも、絶対にこのような質問が無いとは言えないという事か
・裁判官の判断による。この質問をしなさいとも、してはいけないとも規定されていない。
◆Q4:的確ではない人が裁判員になった場合、判決は無効となるか?
・無効にはならない
・控訴審で個々に判断する
◆日本の取調べ情況に関する説明はあるか?
・メディア情報に左右されず、裁判の中で得た情報だけで判断するようにといった説明はある
・取り調べ情況等、踏み込んだ説明をするかは裁判官の判断による
◆外国人でも裁判員に選ばれる可能性はあるか?
・日本国籍で選挙権を有していれば、選ばれる可能性はある

<日弁連 法制2課>
◆Q1:裁判員に参加した事によって、勤め先企業から不利益を受けた場合、企業側への罰則はあるか?
・不利益な取り扱いをしないようにとの取り決めはあるが、裁判員法で罰則は規定されていない
・不利益を受けた裁判員が民事訴訟を起こせば無効となる
・常識に照らして明らかに不当なので、訴訟を起こさなくても無効になる可能性が高い。労働基準法等に即した判断になる。
◆Q2:死刑反対を理由にした辞退は認められるか?
・裁判所の判断になるが、その可能性は高い
・裁判所の判断によっては、召喚状に同封された質問票の段階で辞退になる可能性もある。
◆Q3:面接において、死刑が量刑に含まれない事件も死刑云々の質問があるか?
・裁判所の判断によるが、おそらくはされない可能性が高い
・絶対にする・しないとは断言できない。裁判所の考えによる。
◆Q4:的確ではない人が裁判員になった場合、判決は無効となるか?
・控訴審で判断されることになる
◆日本の取調べ情況に関する説明はあるか?
・裁判所の判断によるが、説明しない可能性が高い
・自白の信憑性が問題になる事件の場合、裁判員に求められて弁護人が説明することはある。また、弁護人が法廷での主張として上記の問題を取り上げる可能性もある。
◆外国人でも裁判員に選ばれる可能性はあるか?
・日本国籍で選挙権を有していれば、選ばれる可能性はある

=========================

といった結果でした。
「可能性がある」的な曖昧な回答が多くて困ったものですが、よろしければご参考ください。
わざわざ法曹三者すべてに聞いたのは、刷り合わせが上手く行っておらず、問い合わせ場所によって違う答えが返ってくる可能性があると思ったからだ。実際、いくつかの質問に関しては、かなりニュアンスの違う回答もあった。

<公式HP>
法務省
日弁連
最高裁

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