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罪を犯して、自殺する人々 [総論]

おにぎり万引きして自殺(スポーツ報知)
東京都渋谷区幡ケ谷のスーパーで3日午後9時半ごろ、万引きをしようとしてほかの客にとがめられた男性が逃走し、取り押さえられた際にナイフで自分の胸を刺して死亡した。警視庁代々木署は自殺とみて男性の身元を調べている。男性は40~50代とみられるが、財布や携帯電話を持っていなかった。盗もうとした品物も、パンやおにぎりなど約1000円相当だったという。(後略)

万引きで自殺。しかも約1000円相当の被害額。
いや、被害額が多ければ自殺しても良いとか、もっと重い犯罪なら死んで当然ということでは断じてない。ただ、それでもやはり「たかが1000円」だ。今時、小学生だってもう少し小遣いをもらってる。その中で、「たかが1000円の万引き」という微罪が、なぜ彼を死に追いやったのか。
今回のケースは特殊であるものの、このように、犯罪を犯した人がその直後に自殺するケースが、どうも目に付く。昔からこんなに多かったっけ?と、少し前から疑問だった。
ざっと検索してみたら
水戸の暴力団幹部刺殺:重体の男性死亡 容疑者、自殺図る /茨城(8月2日)
暴力団員射殺で再逮捕 町田立てこもりの組員(7月30日)
<札幌銀行>自殺した元行員、不正な保証料2500万円詐取(7月27日)
嘱託殺人の男性逮捕(7月21日)
母が娘の首切り、自分の首を切る 川越(7月13日)
約一ヶ月で、今回の万引きを入れれば、報道される範囲の中では6件が、罪を犯した後に自殺を図っている。
もちろん事件数の全体からすれば比率は非常に低いし、実は昔から頻繁にあったけれど、報道されるようになったから増えたと感じるだけなのかも知れない。

しかし私は、この背後に社会から寛容さが失われている事があるように思えてならない。
確かに、古くから「犯罪者」や「前科者」は社会から受け入れられ難かったし、それが殺人のような「凶悪犯罪」であれば尚の事だ。だが、そのことが、事件の直後に死を選ぶほどの絶望感に直結しただろうか。厳罰化に象徴される「一度失敗したら終わり」という社会の漠然とした雰囲気が、現に失敗を犯してしまった人々から、生きる道を奪っているように思う。
確かに犯罪は罪だ。当たり前だ。人を殺した奴に生きる権利など無い、との考えもあるだろう。
だが、こうした風潮が奪っていく「命」は、本当に「死んで償わなければいけないほどの犯罪」を犯した人々のものだけだろうか。

彼・彼女らが、逮捕の恐怖ゆえに自殺したのか、罪の重さに耐えかねて自殺したのか、もっと他の理由なのか、それは人によって違うかも知れないし、私には分からない。
けれど、罪を犯した事で生きる道が閉ざされる(と思える)社会は、誰にとっても、何かしらの失敗によって生きる道を閉ざされる社会であると思う。つまりは、誰にとっても「失敗を許されない窮屈な社会」なのではないか。
失敗した人を糾弾する事で、私たちは自分自身も、決して失敗を許されないのだろうと知る。他人への寛容さを失うことで、自分が寛容に受け入れられる場所も失っていく。
ひどく狭くて息苦しい場所に、私たちは自分の手で自分を追い込んではいないか。

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<関連ニュース>【追記】2007/08/07
栃木保険金殺人 自殺した夫「潔白」遺書 弁護士から聴取(8月7日 産経新聞)
栃木県さくら市の小林はるみさん=当時(41)=を保険金目的で殺害したとして逮捕され、自殺した夫の小林広容疑者(58)の遺書が、宇都宮中央署留置場の畳の下から見つかったことが7日、分かった。自殺直前に接見していた弁護士が明らかにした。
 弁護士によると、遺書は弁護士あてで、はるみさんの死亡と平成16年のはるみさんの二男=当時(7)=の転落死について「潔白だ」と書かれていた。小林容疑者は接見の際「はるみと二男が墓で眠っているので一緒に入りたい」と話していたという。
 県警は自殺時の詳しい状況を調査。接見の終了は、弁護士が呼び鈴を押したり、容疑者自身が面会室のドアを開けたりして留置場担当の署員に伝えるが、弁護士は呼び鈴を押さず、小林容疑者も接見終了を知らせなかったという。県警は当時の状況を弁護士や署員から聴き、約1時間半も面会室の様子が確認されなかった理由を調べている。
 県警によると、小林容疑者は留置場で三食とも残さず食べ、夜もよく寝て、変わった様子はなかったという。
 小林容疑者は6日午後7時45分ごろから、宇都宮中央署3階の面会室で弁護士と接見。留置場担当の署員は、接見時間が長いと感じ午後9時15分ごろ、様子を見に行くと、小林容疑者は首をつり死亡していた。弁護士は午後8時ごろには署を出ていた。
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コメント 2

ヘリオトロープ

>ひどく狭くて息苦しい場所に、私たちは自分の手で自分を追い込んでは>いないか。

同感です。たとえば
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col7504.html
上記の記事ですが、驚いたことに、この作家が雑誌に発表したとき、ひどい扱いをした警察を批判するのではなく、「悪いことをしたのがいけないんだ」と言ってきた人がたくさんいたそうです。権力と言う長いものには巻かれて、言い訳のできない人をたたいていじめる、そんな構図が見えるように思います。
by ヘリオトロープ (2007-08-07 00:01) 

sasakich

>ヘリオトロープさん
そうですねぇ。
もちろん犯罪は悪いけど、社会から抹殺されたり、死刑になるほど悪いことをやったのか、どの程度悪いのか、という冷静な判断って大切だと思うのです。
それが今は、ものすごく手軽に「極悪人」とされてしまう。一人が糾弾されるだけで別の悪い部分は無視され、問題は解決しない。だから同じ事がまた起きて、また一人だけが糾弾されて・・・悪循環ですね。
by sasakich (2007-08-07 20:40) 

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