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災害報道は誰のためにあるのか [メディア]

地震についての報道が続いている。九州の豪雨被害は報道されなくなったが、この短期間に収拾しているはずが無い。沖縄の台風についても、その後どうなったのか分からない。みんな、もう忘れてしまったのだろうか。先週の話なのに。
あらゆる報道に共通することだが、直後だけ過熱報道して終わりってスタイルは、いい加減考え直すべきだ。どんな悲劇も、起こった瞬間だけで収まりはしないのだし、時間がたつに連れて深刻化する場合も多くある。どんな問題点があって何をすべきなのかも、即座に分かることはそうそう無い。
一方で、世間の忘却速度が速くなればなるほど、あらゆる問題は放置され続ける。
更に言えば、過熱報道あるところに報道被害ありである。これも、冷静な分析や建設的な提案のためではなく、ひたすら刺激的でセンセーショナルなものを追い求めた結果だ。
事件報道の報道被害については多少知っていたが、災害報道も同じ問題を抱えているようだ。

【伊東沖海底噴火と災害報道】より引用
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 伊東沖海底噴火の場合もその例外ではなく、その最盛期には五〇〇人を越える報道関係者が殺到して、観光客がいなくなった旅館やホテルに、報道関係者の姿ばかりがめだつという状態になった。そして、功を急ぐあまり強引な取材活動を行い、市当局の防災活動を阻害したケースや、被災者や避難者に無神経な取材をして、住民から反発を受けたケースがしばしばあったようである。
 こうした取材モラルの欠如を示す典型的な例が、「朝日新聞」(七月一七日朝刊)の投書欄に載っている。投書者は伊東市在住の七七歳の男性で、連続性微動が発生した一一日夜、不安を感じた住民たちが近くの寺院に避難したところ、そこに報道関係者が押し寄せ、体を休めていた人を起こしてマイクを突きつけたり、就寝していた人に照明を向けたりしたため、かなりの避難者が家に逃げ帰ってしまった。みかねた副住職が警察署に訴え、後に警察が報道関係者に節度ある取材を申し入れた、という事実を書いている。
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災害報道は、世間一般に災害の悲惨さを伝えて援助の機運を高めたり、防災の意識を高める効果もあるだろう。しかし、そのために被災者がないがしろにされてしまっては本末転倒だ。
大きな自然災害があると、必ずといって良いほどヘリコプターからの中継がなされるが、その騒音も実は、助けを呼ぶ声をかき消して生存者の発見を困難にさせるなど、人命救助に悪影響を与えている側面がある。
被災者に迷惑をかけ、防災活動の邪魔をして撮影された映像を見て、私たちは被災者の身を案じる。なんという矛盾だろうか。

刺激的な映像を羅列することが必要なのか。もっと他に伝えるべき内容があると思えてならない。
阪神大震災の際にも言われたことだが、現地で被災した方々が必要としているのは、知り合いや家族の安否情報であり、どこでいつ物資の提供があるかといった身近な情報だ。もちろん、それを全国放送でやる必要は無いし、個人情報保護法のおかげで難しい面もあると思う。
でも、じゃあ全国放送される災害報道はいったい誰のためにあるのか。
一般論としての防災対策を伝えたいなら、避難所ばかり中継しても意味が無い。この地震が与えた社会への問題提起を考えるなら、各地にある原発の危険性も報道すべきだ。自然災害が与える地域住民への影響という意味では、経済的な立ち直りの問題はもちろん、災害地における女性の人権問題なども、専門家を交えて長期的に考えていく必要があるだろう。
しかし、そんな報道は目にしない。
悲劇から学ぶことは大変に重要だ。日本は必ず地震が起こるのだから、悲劇をどれだけ具体的な教訓として生かせるかかが、今後の被害を抑える最大の力であるはずだ。全壊した家屋を映し出して「かわいそうに」などとお涙頂戴してる場合じゃない。

<関連>
言論江湖【暴風に立つだけが災害報道か】
【中越地震2年/過疎克服に多くの知恵を】

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【追記】2007/07/21

<中越沖地震の避難所、テレビ局が隠しマイク仕掛ける>
 新潟県柏崎市内の避難所の1カ所にテレビ局のスタッフが隠しマイクを仕掛けていたいことが21日、分かった。同日になって発覚、市災害対策本部がスタッフにマイクを取り外させ、厳重に抗議した。
 同本部では「精神的に疲労している避難所の被災者に事実を知らせることで不快な思いをさせたくない」として、詳しい経緯は明らかにしていない。
 隠しマイクをめぐっては先月、TBSが人気若手ゴルフ選手の石川遼さんの取材で使用しようとしたとして、問題化したばかり。
 また、同日午後には避難所の1カ所で、住民から取材を控えてほしいとの要望が寄せられ、本部が一時的に報道各社に取材の自粛を要請した。本部では「休んでいる被災者もおり、各社には節度ある取材に努めてほしい」としている。

7月21日22時17分配信 産経新聞


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