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大事件を決めるのは誰か [メディア]

犯罪は微罪から重大犯罪まで多種多様に存在するが、メディアの扱いは、必ずしも重大犯罪だから大きくなるとか、微罪だから小さいということは無い。いわゆる「社会問題」にしても、深刻で広範な被害が出るから大きく扱われるとか、さして害が無いから扱われないわけでもない。
例えば、ここ数日話題になっているミートホープの偽装問題についても、確かに大手だから被害は広範であるものの、別に毒物が入っていたわけではないし、それによる健康被害があったわけでもない。食の安全という観点から言えば、添加物や農薬のほうが(合法でありながら)よほど広範に渡って実害のある深刻な問題だが、そんなことはメディアでほとんど取り上げられない。
ここには、まずスポンサーとの利害関係がある。食品添加物を批判的に扱えば、ほぼすべての食品産業・外食産業・コンビニ・スーパーはスポンサーにならないだろう。自分の取り扱っている商品を批判されているのだから、当然のことだ。
このように、スポンサーとの利害関係や、国との利害関係によって、重要でありながら扱われない問題は山のようにある。

一方で、事件の重大性とは無関係に、刺激的な映像があって視聴率が取れるから、との理由で必要以上に大きく取り上げられる事件もまた多い。
少し前、中学だったか高校の教員が下着ドロボーをしたことが、やけに大きく扱われた。確かに、公務員(それも教職員)が性犯罪(?)を犯したのだから、普通の窃盗より大きく扱われるのは当然かもしれない。しかし、それにしたってあまりにも大々的な報道だったのだ。ヘタすりゃトップニュース並みの扱いだった。
これほど大事件として扱われた理由は、おそらくは単純である。「画があったから」だ。
被害者の女性が防犯カメラを仕掛けていたおかげで、この事件は下着を盗むまさにその瞬間が、犯人の顔とともに録画されていた。テレビ的にはこの上なく「オイシイ映像」があったわけだ。渋谷スパ爆発問題も、都心で起きたとはいえ、爆発直後のあの映像が無ければ、ここまで大きなニュースになっただろうか。
また、事件報道など視聴者の感情を喚起しやすい問題も、犯罪の軽重や特異性とは関わり無く大きく扱われる傾向にある。

ここには、いくつかの問題がある。
多種多様な事件・問題がある中で、放送時間も紙面も限られている。さして重要でない(が視聴率は取れる)問題ばかりに放送時間と紙面が割かれれば、他の問題は小さな扱いにせざるを得ない。それが例え、実際にはとても重要な問題であってもだ。
ましてや本当に深刻な問題は説明に時間がかかり、分かりにくく、しかも刺激的な映像を伴わないような「地味」なものである場合が多い。社会システムそのものが起因している場合は特にそうである。数分のVTRを見てコメンテーターが数十秒の解説なり意見を言って次の話題に移る番組構成では、こうした問題の核心を突くことは不可能だろう。
刺激的な映像や証言ばかりが幅を利かせ、地味で冷静な分析が嫌煙される中、扱いのバランスは明らかに崩れていく。そして、重要な問題が議論とならないまま放置されていく。
更に言えば、司法の世界で「世間に与えた影響が大きい」ことから重罰が課せられる現実が出てきている今、メディアが騒いだことが量刑にまで影響してきている。メディアが何を大きく伝え、それによって大きな影響を与えるかは、報道の範囲を超えた問題でもあるのだ。

テレビでニュースを観るとき、新聞を読むとき、少しだけ考えてみよう。
トップニュースや1面に載る刺激的な事件と、数分しか流れないニュースの、どちらが本当に重大なのか。

ミートホープ問題については、後日のエントリー「中国を叩けば食卓は安全か」もご覧ください


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